2023.07.08

獣医師 南毅生のブログ (その26)

外科手術のはなし

今回は、開胸術について、考えたいと思います。

開胸術には2種類の方法があります。肋間切開と胸骨中切開です。これらの方法は、どのような疾患のために開胸するかによって選択します。

 

肋間切開は、肺腫瘤、乳び胸、PDAそして、心膜切開で実施します。

胸骨中切開は、胸腺腫、肋間切開では切除できない大型の肺腫瘤や他の胸腔内腫瘤の切除で実施します。

肋間切開は、単純に肋間筋を切断し、胸膜を切開して開胸します。胸膜切開前に麻酔担当者に麻酔の状況を確認して胸膜を切開し、切開後は、胸腔は陰圧でなくなるので陽圧呼吸が必要になります。

胸骨中切開は、皮膚を切開し、胸骨の成虫を電気メスで明確に露出し、その後電動あるいは軌道敷の層を用いて胸骨正中を切っていきます。

その際、麻酔担当者には、胸腔にソウが入った時に胸腔が陰圧でなくなったため、呼吸はソウが胸腔に入っていない時に実施するように指示します。

また、胸骨は前方を完全に切断したら、決して後方は切断しない。その逆も同様です。

 

このように、胸腔が陰圧でなくなるため、麻酔担当者との意思疎通をしっかりする必要があります。

人工呼吸装置の装着も良いのですが、手術がしにくい場合があるので私は用手法を実施しています。

 

肋間切開での閉胸は、切開した前後の肋骨に非吸収性の糸を通し、肋骨を接するようにして肋間筋そしてその上部の筋肉を密に連続縫合することで、空気が外から中へ侵入することを防ぎます。閉胸前に胸腔の空気を吸引し、陰圧にするドレーンを挿入固定します。

胸骨中切開では、切断した胸骨左右に非吸収性の糸を通して切断した胸骨で可能な限り接するようにします。その後、上層の筋肉に連続縫合を行い空気の外から中への侵入を防ぎます。

閉胸前に胸腔の空気を吸引し陰圧にするドレーンを挿入固定します。

 

その他、無気肺の処置・局所麻酔・気管チューブの抜管方法等様々な項目を実施して終了となります。

胸腔鏡での胸腔内処置に関しては、これらの開胸手術を十分に経験して実施することを切に願います。

 

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文責
南 毅生

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