2023.09.30

獣医師 南 毅生のブログ (その39)

外科手術のはなし

動脈管開存症(PDA)

胸腔内手術の中で、動脈管開存症(PDA)に関して話をしたいと思います。

 

動脈管は胎児期に肺の血管系を使用しませんが、生後まもなく自分の肺循環を使用するようになるために数日で萎縮し、数週間では完全に閉鎖します。しかし、この血管が閉鎖せずに開存していることから循環不全を起こす疾患が動脈管開存症(PDA)です。

 

この疾患には、個人的に思い出があります。84年 ペンシルバニア大学に留学していた時、遺伝学の教授ピーターソン先生に連れられて、彼らが心疾患の遺伝病を研究している犬のコロニーに連れて行ってもらいました。

 

先生に、「この犬の心音を聞いてみな!」と言われて聴診器を貸してもらって聞いたのが、連続性雑音でした。PDAです。この犬の耳の裏にタトゥーで1000と書かれていました。そこで、先生に「この数字の意味は何ですか?」と尋ねたところ、「このコロニーでPDAになった1000頭目」と言われました。その症例の多さにびっくりしたことを今でも覚えています。
ただし、聴診は肺野全域で行わないと収縮性雑音だけの領域もありますが、診断は聴診で十分行えると思います。

 

治療方法は、カテーテルか開胸術です。
カテーテルの場合には、あまりにも小型の動物や大型の動物では、動脈管を閉鎖する器具がない場合があり、結果的に開胸術となります。左開胸で肺動脈と大動脈に開通している動脈管を結紮閉鎖することで手術は終了です。ただし、肺動脈の接合部分が肺動脈の幹部よりも枝分かれした部分に存在する場合には結紮時に注意が必要です。

 

合同年次大会では、林先生と一緒に留学していた時の話も交えながら2人で講義を行います。ご興味ある方は是非登録してご参加ください。

 

文責
南 毅生

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