獣医師 南毅生のブログ(その5)
今回は、
“手術のはなし”猫の乳腺腫瘍についてです。
猫の乳腺腫瘍は犬の乳腺腫瘍とは異なり、悪性の比率が高い腫瘍です。
WHOで定義されている大きさの分類で、2センチ以下、2-3センチ、そして3センチ以上に分けて
予後の判定をした結果、3センチ以上の腫瘍で予後が非常に悪かった(JAVMA 185:201-204(1984)と
報告されています。
また、同じ論文で、部分切除と片側全切除を比較すると片側全切除の方が、予後が良かったと
報告されています。
このことから、猫の乳腺腫瘍では、飼い主さんが乳腺腫瘤に気づいて来院された時点で腫瘍の
大きさに関わらず乳腺片側全切除が最も良い治療となります。
また、犬の場合と同様に、避妊手術によって乳腺腫瘍の発生を抑制できないのでしょうか?
2005年アメリカ獣医内科学雑誌において、Beth Overleyらが、生後6ヶ月より前に避妊手術
(卵巣子宮切除術)を行うことで、乳腺がんの発生を91%抑えることができると報告しています。
よって、生後初めてのワクチン接種に来院した雌猫の飼い主には、エビデンスに基づいた乳腺腫瘍の
発生の抑制方法を、また、乳腺腫瘍が発生した症例の飼い主さんには早期の片側乳腺全切除の話を
することになります。
エビデンスに基づいた猫の乳腺腫瘍の発生を抑制できる状況の詳細〈猫の乳腺腫瘍の切除方法〉に
関しては、JCABINで検討しております。
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文責 南 毅生
Takeo Minami,DVM,MS,PhD,JCVS